沖縄戦時、相次いだ離島での集団自決について住民に軍が命令を出したとする大江健三郎氏著の「沖縄ノート」(岩波書店)などの書籍で、名誉を傷つけられたとする日本軍元隊長らが著者大江氏と発行元である岩波書店に出版差し止めを求めた訴訟は、既報の通り4月21日、大江・岩波側の全面的勝利となる最高裁判決がくだされた。
これに関する「大江・岩波沖縄戦裁判勝利報告集会」が6月17日、大阪市中央区のエルおおさかであった。主催は、この裁判の地元としてその支援の中心で活動した<大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会>によるもので、会場には岩波書店から雑誌世界編集長・岡本厚氏、弁護団から近藤卓史氏らがかけつけ、これまでの支援に感謝の意を述べ、「今回の裁判は、特定の歴史観をもった一部層が、名誉毀損という形をとりながら沖縄戦の真実を歪曲化し、当時の天皇護国史観の賛美復活を狙った極めて政治的なもの。著者大江氏は、ご自分のしたためられた文章の一句、一条も正確に誠実に記憶されており、改めてこのノーベル賞作家の執筆の良心の有り様に触れた想いを深くした。さらにあの11万という沖縄集会の<オジィ、アバァ>が嘘を付くはずはないとの憤激に満ちた沖縄の人々の熱い魂が裁判官を揺り動かした」(岡本氏)と会場に詰めかけた支援メンバーに感謝の言葉が続いた。
年 |
月 |
日 |
事 項 |
2005 |
3 |
|
「歴史と教育」(自由主義史観研究会機関紙)91号に藤岡信勝代表が「沖縄戦 慰霊と検証の旅」を予告 |
5 |
20 |
自由主義史観研究会沖縄プロジュクト「沖縄戦慰霊と検証の旅」(~22日) |
6 |
4 |
自由主義史観研究会緊急集会「沖縄戦集団自決の真実を知ろう」(東京)、皆本義博、梅沢裕、照屋昇雄証言、服部剛授業報告 |
6 |
19 |
那覇市で沖縄平和ネットワークなど8団体主催の緊急シンポジウム「軍隊の支配する世界 一沖縄戦の『真実』にせまる」安仁屋政昭講演、山口剛史報告 |
7 |
24 |
「産経新聞」が「当時の守備隊長と遺族がノーベル賞作家の大江健三郎氏と岩波書店を相手取り、損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こすことが23日わかった」と報道 |
8 |
5 |
梅沢裕(元陸軍海上挺進隊第一戦隊長、少佐)と赤松秀一(同第三戦隊長、大尉、赤松嘉次の実弟)が大阪地裁に提訴(損害賠償と出版停止などを求める)、被告は、大江健三郎と岩波書店、訴えられたのは「沖縄ノート」(1970年出版、岩波新書)
家永三郎「太平洋戦争」(1968年初版、2002年岩波現代文庫として改訂出版)
中野好夫・新崎盛暉「沖縄問題20年」(1965年初版、74年出庫停止、岩波新書) |
8 |
|
「正論」9月号に、原告代理人の松本藤一「沖縄戦・集団自決は「軍が命じた」のウソ なぜ大江健三郎と岩波書店を訴えるのか」発表 |
10 |
28 |
大江・岩波沖縄戦裁判第1回口頭弁論(大阪地裁第9民事部、端二三彦裁判長)松本藤一弁護士意見陳述、梅澤裕、赤松秀一が原告陳述、被告側は出席せず |
年 |
月 |
日 |
事 項 |
2006 |
1 |
27 |
大江・岩波沖縄戦裁判第2回口頭弁論、被告(大江・岩波)代理人の秋山幹男、近藤卓史、秋山淳弁護士出廷、双方意見陳述 |
3 |
24 |
大江・岩波沖縄戦裁判第3回口頭弁論、双方意見陳述 |
3 |
24 |
「沖縄戦を考える会・大阪」が学習会、沖縄平和ネットワークの鈴木龍治講演、支援組織結成について意見交換、岩波書店の岡本厚出席 |
5 |
|
曽野綾子著「ある神話の背景」が「沖縄戦・渡嘉敷島「集団自決」の真実」として復刊 |
5 |
18 |
大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会(以下、「支援連絡会」)準備会を開く |
5 |
18 |
支援連絡会「Newsletter準備号」発行 |
6 |
9 |
大江・岩波沖縄戦裁判第4回口頭弁論(裁判長が深見敏正に交代)、双方意見陳述、 裁判長が原告に、いつの時点から名誉毀損が生じたのかを問う |
6 |
9 |
支援連絡会発足集会、石原昌家講演、弁護団報告、岩波・大塚茂樹あいさつ |
6 |
20 |
支援連絡会.「News letter第1号」発行(以後2011年6月の26号まで発行) |
7 |
13 |
支援連絡会第1回拡大世帯人会(以後2011年6月までに51回開く) |
9 |
1 |
大江・岩波沖縄戦裁判第5回口頭弁論、双方意見陳述、原告が中野好夫・新崎盛暉 『沖縄問題二十年』についての訴え取り下げる |
9 |
1 |
支援連絡会学習会、裁判報告、安仁屋政昭講演 |
11 |
10 |
大江・岩波沖縄戦裁判第6回口頭弁論、双方意見陳述、原告側は「住民たちは『軍 命があった』と思い込んでいた」と主張を変える |
11 |
10 |
支援連絡会学習会、弁護団報告、津多則光講演 |
12 |
10 |
沖縄で「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(以下「平和教育 をすすめる会」)結成総会(1フィート運動の会など七団体の呼びかけ) |
年 |
月 |
日 |
事 項 |
2007 |
1 |
19 |
大江・岩波沖縄戦裁判第7回口頭弁論、双方意見陳述(被告代理人、林博史氏が米国公文書館で発見した「慶良問列島作戦報告書」を証拠として提出) |
1 |
19 |
支援連絡会学習会、裁判報告、「宮村幸延インタビュー」のVTR上映、朴壽南報告 |
3 |
26 |
支援連絡会「慶良問列島強制集団死検証の旅」実施(「平和教育をすすめる会」メンバーも合流)(~28日まで、08、11年にも実施) |
3 |
30 |
大江・岩波沖縄戦裁判第8回口頭弁論、原告代理人(徳永信一)が法廷で報道解禁前なのに、「今回、集団自決についての教科書記述が文科省の検定で、軍命でないと修正されたことは部隊長らの主張が取り入れられた結果でたいへん喜ばしい」と陳述 |
3 |
30 |
支援連絡会学習会、裁判と「渡嘉敷・座間味強制集団死検証の旅」報告、教科書検定問題で論議 |
3 |
30 |
文科省が高校日本史教科書の検定結果を発表、沖縄戦「集団自決」の日本軍の強制に検定意見を付け、書き直きせたことが判明 |
4 |
2 |
支援連絡会・平和教育をすすめる会「高等学校歴史教科書検定における沖縄戦の『集団自決』の記述から『軍の強制』を削除させたことに対して抗議する」声明発表 |
4 |
4 |
大江健三郎・岩波書店・沖縄「集団自決」訴訟被告弁護団「沖縄『集団自決』に関わる06年度教科書検定に抗議する」声明発表 |
5 |
10 |
宮里盛秀の妹、宮平春子が兄盛秀が「軍からの命令で、敵が上陸してきたら玉砕するように言われている。まちがいな〈上陸になる。国の命令だから、いさぎよく一緒に自決しましょう」と言ったとする陳述書を提出 |
5 |
24 |
支援連絡会シンポジウム「沖縄戦集団死の書き換え許さない」、パネラー・津多則光、大塚茂樹、小牧薫 |
5 |
25 |
大江・岩波沖縄戦裁判第9回口頭弁論、双方弁論、裁判長が次回から証人調べにはいると予告 |
6 |
9 |
「沖縄戦の歴史歪曲を許さない!沖縄県民大会」(63団体で実行委員会構成)県庁前広場に3500人、瑞慶覧長方、首都圏の会・大塚茂樹などが発言、決議採択 |
6 |
15 |
「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し、沖縄の真実を広める首都圏の会」(以下、首都圏の会」)結成総会、石原昌家講演、小牧薫報告 |
6 |
22 |
沖縄県議会「教科書検定についての意見書」全会一致で採択(同様意見書が6月中に41の沖縄全市町村議会で採択) |
7 |
27 |
大江・岩波沖縄戦裁判第10回口頭弁論と証人尋問、皆本義博・知念朝睦(原告側)
宮城晴美(被告側)証言 |
7 |
27 |
支援連絡会第2回総会と裁判報告集会、弁護団報告、宮城晴美、石山久男報告、目取真俊講 |
9 |
10 |
大江・岩波沖縄戦裁判、福岡高裁那覇支部で金城重明(被告側証人)の所在尋問 |
9 |
10 |
支援三団体、那覇市で「出張法廷報告集会」、弁護団と金城重明報告 |
9 |
14 |
支援連絡会沖縄所在尋問報告集会、謝花直美講演,小牧薫報告 |
9 |
27 |
首都圏の会「9.29沖縄県民大会に連帯・呼応する集会」林博史、山口剛史、小牧薫報告、TR上映 |
9 |
29 |
教科書検定意見撤回を求める沖縄県民大会(仲里利信実行委員長、宜野湾市)11万人
参加、宮古島、石垣島大会に6000人参加、吉川嘉勝渡嘉敷村教育委員長らが体験報告
|
9 |
15 |
沖縄県民大会代表らが政府交渉(16日も)報告集会に支援3団体代表も参加 |
10 |
9 |
大江・岩波沖縄戦裁判第11回口頭弁論(本人尋問)、梅澤裕・赤松秀一証言、大江健三郎証言 |
11 |
9 |
支援三団体本人尋問報告集会(大阪)、弁護団報告、山口剛史・石山久男講演 |
11 |
3 |
東京沖縄県人会・首都圏の会「12.3沖縄戦教科書検定意見撤回を求める全国集会」(九段会館)、金城重明講演、坂本昇・曙峻淑子・水島朝穂・小牧薫報告 |
12 |
14 |
支援三団体、大阪地裁に公正裁判要請署名13,995筆を提出 |
12 |
21 |
大江・岩波沖縄戦裁判第12回口頭弁論、双方最終陳述で結審、原告側は、「家族愛からの『心中』」と主張を変える |
12 |
21 |
支援三団体裁判報告集会、弁護団報告、岩波・岡本厚報告、坂本昇講演 |
12 |
26 |
文科省「集団自決についての基本的な考え方」にもとづいた訂正申請に対する検体結果を発表、「日本軍の強制」は認めず、「関与」を認める |
12 |
27 |
支援三団体、沖縄戦教科書問題で文科省交渉 |
年 |
月 |
日 |
事 項 |
2008 |
3 |
28 |
大阪地裁(深見敏正裁判長)判決言渡し、被告全面勝利、「戦隊長の関与十分に推認できる」と判示 |
3 |
28 |
支援三団体判決報告集会(大阪)、弁護団、岩波・岡本厚報告、安仁屋政昭講演、集会後、裁判勝利を祝う会開く |
4 |
2 |
梅澤・赤松が大阪高裁に控訴 |
4 |
24 |
「沖縄戦検定意見撤回を求める4.24全国集会-いらない!こんな教科書検定-」
(豊島公会堂)、暉峻淑子講演、石山久男・小牧薫・山口剛史・俵義文・小佐野正樹報告
|
6 |
24 |
梅澤裕・赤松秀一の代理人が控訴理由書提出 |
6 |
25 |
大阪高裁(第四民事部ハ係・小田耕治裁判長)で、控訴審第1回口頭弁論、双方意見陳述、控訴人(梅揮・赤松)側「控訴理由書」の提出遅れ、その記述内容について誤りを裁判長から指摘される、控訴人の証人申請却下 |
6 |
25 |
支援連絡会第3回総会、裁判報告集会、弁護団、岩波・小田野、首都圏の会・寺川報告 |
9 |
9 |
大阪高裁第2回口頭弁論、双方陳述で結審、控訴人側は宮平秀幸「陳述書」など提出、
被控訴人側は垣花武一「陳述書」提出、宮平秀幸陳述について論破 |
9 |
9 |
支援三団体「一審判決を維持し控訴棄却を求める要請署名」を提出(累計23,062筆) |
9 |
9 |
支援連絡会裁判報告集会、中村政則講演、弁護団報告 |
10 |
31 |
大阪高裁(小田耕治裁判長)判決言渡し、「控訴棄却」、日本軍の関与を認め、出版・表現の自由についてあらたな判断 |
10 |
31 |
支援三団体判決報告集会、弁護団報告、平良宗潤・宮城晴美講演、集会後、勝利を祝う会開く |
11 |
11 |
梅澤裕・赤松秀一の代理人、最高裁に上告、上告理由申立 |
12 |
29 |
梅澤裕・赤松秀一の代理人、大阪高裁に上告理由書、上告受理申立理由書提出 |
年 |
月 |
日 |
事 項 |
2009 |
1 |
30 |
支援連絡会「最高裁勝利をめざして学習会」近藤卓史講演 |
2 |
15 |
読売テレビ「たかじんのそこまで言って委員会」の「沖縄集団自決問題」に、高嶋伸欣・小牧薫出演 |
2 |
27 |
支援三団体代表、最高裁に「高裁判決を維持し、上告棄却を求める要請署名」を提出(7,032筆、以後のものをあわせると15、899筆) |
6 |
5 |
支援連絡会第4回総会・学習会、岩波・岡本厚報告 |
6 |
23 |
支援連絡会世話人の栗原佳子著「狙われた『集団自決』大江・岩波裁判と住民の証言」出版 |
9 |
11 |
支援連絡会学習会、高嶋信欣講演 |
9 |
29 |
沖縄・県民大会決議を実現する会が県民広場で2周年記念集会を開く |
11 |
27 |
支援連絡会学習会、大田昌秀講演 |
年 |
月 |
日 |
事 項 |
2010 |
1 |
16 |
支援三団体と県民大会決議を実現する会代表など、中学校教科書発行会社(教出・帝国・東書・清水)を訪問し、沖縄戦記述について要請 |
1 |
26 |
支援連絡会代表が教科書会社(日文)を訪問し、沖縄戦記述について要請 |
3 |
5 |
支援三団体と出版労連、教科書ネットの連名で、国立歴史民俗博物館の新常設展示室「現代」の「沖縄戦集団自決」の説明について、「要請書」を手渡す |
4 |
23 |
支援連絡会学習会、新崎盛暉講演 |
6 |
7 |
県民大会決議を実現する会,支援連絡会代表など、高等学校日本史教科書発行会社
(東書・三省堂・清水)を訪問し、沖縄戦記述について要請 |
7 |
27 |
支援連絡会学習会、吉川嘉勝講演 |
11 |
27 |
支援連絡会学習会、謝花直美講演、DVD上映 |
年 |
月 |
日 |
事 項 |
2011 |
2 |
4 |
支援連絡会学習会、伊波洋一講演 |
4 |
21 |
最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)が「上告棄却、上告不受理」の決定、大阪高裁判決が確定 |
5 |
24 |
支援三団体、東京で「裁判勝利報告集会」開く、秋山淳弁護士報告、岡本厚挨拶 |
6 |
3 |
支援三団体、東京で「中学校歴史教科書に書かれた沖縄」集会開く、小牧薫・石山久男・吉田典裕報告 |
6 |
17 |
支援連絡会「裁判勝利報告集会」秋山幹男・近藤卓史・秋山淳報告、岡本厚挨拶、のち祝賀会 |