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大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会は2月4日、先の知事選で惜敗した前宜野湾市長の伊波洋一さんを沖縄から招いて、現在の米軍基地の状況や戦後に沖縄戦が与えた影響などを知る学習会をエル大阪(大阪市中央区)の大会議室で行いました。連帯ユニオン近畿地方本部と関西地区生コン支部からは垣沼地本執行委員長以下10数名が学習会に参加しました。
 

学習会ではまず、岩高澄代表世話人が「伊波さんは普天間基地を抱える宜野湾で生まれ育ち市長もされた方です。現地の方々は基地問題でたいへん大きな課題を突きつけられてきました。この課題を今日、私たちはしっかり受け止め、そして今、何が問題なのか?私たちに何が出来るのか?ということもご提案いただけたらと思います」と開会挨拶を行いました。

 

次に、本日の講師伊波洋一さんから『沖縄戦と米軍基地』と題して講演をいただきました。


伊波洋一さん講演『沖縄戦と米軍基地』
先の知事選では多くの皆さんのご支援を頂きながら、私の力不足のために落選いたしました。しかしながら、今回の知事選を通して基地問題に関する沖縄の立場を全国に知らせることが出来たと思います。特に、県民全体が「県内移設に反対する」というようなスタンスを作り出すことが出来たことは、「今回の知事選に取り組んで良かった」と思える点であります。4年後には捲土重来の気持ちを持ちながら頑張っていきたいと思っております。
この(大江岩波)裁判が真実を隠さずに歴史の中で明らかにしていこうというのは非常に意義あるものですが、しかし、それを隠蔽しようとする勢力が今日極めて大きくなっています。本屋にも逆の立場で正当化するような本もあふれていますから、ぜひ最高裁まで闘って、しっかりとした決着をつけていただきたいと思います。
2005年に提起されたこの裁判に対して、沖縄では2007年の9月29日に教科書検定撤回の県民大会が開催され、宜野湾市の多目的広場に沖縄県民11万6千人が怒りをもって集まりました。高校教科書に集団自決の記述が無くなるということに対する沖縄県民の怒りだったわけですが、残念ながらこの問題についてもまだ決着しておりません。そういう中で大江岩波裁判の持っている意味は極めて大きいと思います。最高裁の中で判断されることも大事だと思いますし、そうなれば検定の際に作られた「今、裁判中だから」という判断保留の問題もクリアされていくでしょう。
なぜ、事実や歴史を埋もれさせる、あるいは歪曲させる動きがあるのでしょうか。過去の日本軍が作り出した悲惨な戦争という歴史を消すことが、次の新しい戦争へのステップとして必要だからだろうと思うのです。いま、新しく沖縄とベトナムを中心として日本を舞台にする戦争への準備が行われているのではないかという懸念を私は持っています。
(中略)
  
非常に重たい事情があり、沖縄では集団自決について充分に語られていなかったのですが、次第にいろんな事件があったことが語られるようになってきました。一方、事実を国民に対しても国会に対しても隠しながら、米軍再編の名の下に沖縄の基地を新たに作ろうとしている日本政府がいます。自民党の時も今の民主党政府もそうです。しかし、そういう政府に対して私たちが「なすすべがない」とは思っておりません。
今日は、日ごろ大手マスコミがいかに本当のことを語らずに「政府が一方的に言っていることを私たちに語っているか」ということをお話ししたいかと思います。そして、本来ならば日本国内の基地に対して適用されるべき(安全)基準が適用されないまま放置されていること。沖縄の基地や山口(岩国)、厚木もそうですが、米軍基地周辺の住民が苦しんでいるということを皆さんにも知っていただいて、取り組んでいくことが日本の将来について大事であるということを私のほうから提起させていただきたいと思います。
米軍再編の流れの中で辺野古問題について述べたいと思いますが、辺野古というのは普天間飛行場の海兵隊を移すのが目的ではなくて、完全に違う目的で作られるのだろうと思います。というのはアメリカの資料を見る限り、沖縄に海兵隊が残る価値、残る意味、あるいは残る証拠すら無い。これがアメリカの計画なんですね。1月にアメリカのゲイツ国防長官が来ました。彼は何と言ったかというと、「沖縄から海兵隊の部隊と家族がグアムに移るのだ」と。そして、「沖縄における米軍の基地がカデナイナを含めて多くの基地が返される。だから辺野古を作ることはそれと比べれば負担軽減なんだ」ということを記者会見等でしっかり言っているんですね。
ところが日本政府からはそういう言葉はでません。相変わらず海兵隊は日本に居ないといけないんだと。だからこそ辺野古を作るんだと。1996年のSACO合意のスタートからなんですが、言い続けている。ところがアメリカではそんな話はまったくないんです。連邦議会に対する報告書や現在の計画書やいろんなものを見る限り、そんなことはアメリカは言っていません。アメリカが求めているのは新しい軍事基地としての辺野古であって、海兵隊はむしろグアムに移していく、そういうことが明確に書かれています。そのために日本政府は我々の血税を7000億円も出す約束をしているのです。それを一方でしながらその中身を国民に説明をしない。逆に隠蔽をしていく。
そして鳩山前総理が「学べば学ぶほど抑止力云々・・・」と言ったように、あれを聞くと多くの国民は「やはり海兵隊がなきゃダメなんだ」と思うのでしょう。そして多くの軍事評論家が「海兵隊は沖縄に居ないといけない」と。そして、例えば日本本土に基地を移すとそこに行くのに2、3日かかるというので「その時間差がどうしても大事なんだ」と言います。私は普天間飛行場のそばに住んでいますが、この7年半、普天間飛行場の監視をしながら明らかになっていることは、普天間の海兵隊は一番主力なんですが半年間は沖縄に居ないのです。どこに居るのかというと、フィリピンであったりオーストラリアであったり韓国であったり、そういう形で西太平洋の各地を転々と移動しているのです。
アメリカは世界で7つの主要な安全保障条約を締結しています。そのうちの5つは西太平洋にあります。その西太平洋の安全保障条約の担保としてそれぞれの国と大きな軍事訓練をするのです。日本では大きな訓練はしておりませんが、「山桜」という図上訓練をしています。今年は先月の27日から昨日までやっていました。何万人も参加する演習の際に沖縄の海兵隊は、それぞれの国との安全保障条約を担保する役割として、1ヶ月2ヶ月とそこに行っているわけです。
だから、専門家や防衛関係者が言うように沖縄に基地を置かなければ緊急の時に(活躍)出来ないというのはまったくのデタラメ。海兵隊は年のうち半年以上は日本に居ません。そして沖縄に居るときは何をしているかというと、休んでいるんです。
怖いのは昨日までやっていた「山桜」という図上演習は、いよいよ沖縄列島を戦場にする演習をしているんですね。つまり、対中国脅威論をここでしっかりと国民に認識させていって、日本列島の中でさらに沖縄・南西諸島を中心に軍事的緊張を作り出すというのが大きな、今のアメリカの役割だろうと思います。そうすることによって日本自身が中国の海軍を警戒する流れを作っていこうということが行われようとしています。
こういったことを考えると、皆さんが裁判で提起している「しっかりと真実を伝えていく」という大事さが大変重要だと思います。大江岩波裁判で提起しているのは日本軍の実態ですよね。日本軍が住民を犠牲にしながら戦争を遂行してきたこと。沖縄離島でも本島の各地区でも同じようなことがあったのですが、やはり軍隊に乗っ取られた国の怖さというものが渡嘉敷や座間味に示されているように思います。同時にアメリカがイラクやアフガンでやっている戦争の拠点となっている沖縄、あるいは日本全国が拠点となっているということに対して、私たちはしっかりと言葉にしていかないといけないと思います。私たち日本国民は「それでいい」と思っているわけではないのです。

その後、伊波さんはスライド写真で普天間飛行場や沖縄米軍基地の状況を紹介。米軍関係者も認める「世界一危険な普天間飛行場」の近くにある小学校や道路状況などを説明されました。また、基地が無くなった場合の沖縄経済に与える影響も実際に基地が返還された土地に出来た「那覇新都心」を例に説明。年間1万人も人口が増え続けている沖縄県では住宅供給も大きな課題であり、広大な基地の土地が返還されるとその需要に応えることが出来ること。そして道路整備などの区画整理事業や住宅建設、商業用地建設などで現在基地に勤めている県民の数よりも数十倍の雇用が生み出せること。これらにより「数千億円規模の事業プロジェクトが企画出来る」としています。

 

大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会は大江健三郎氏と岩波書店が被告とされた『沖縄戦裁判』を支援するために結成された団体。大江氏と岩波書店を名誉毀損と出版停止で訴えた原告側に対し、08年3月に大阪地方裁判所で被告側はすでに全面勝利の判決を勝ちとっていますが、原告側は上告。支援連絡会としては最高裁に向けて「第2審判決を維持し、上告棄却の判決を求める」活動を行っているほか、沖縄戦の歴史歪曲を許さず沖縄戦の真実を広く国民に知らせていくため、主に関西を中心に運動を行っています。


連帯ユニオン議員ネット