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質問

 労災で療養中に定年になりました。
退職後も業務上で被った負傷の療養を行う場合、労災保険給付は受けられるでしょうか。
説明

まず知っておきましょう。
労災保険の給付には、「業務災害」、「通勤災害」と「社会復帰促進等事業」があります。


■ 「業務災害」の保険給付の内容は、7つに分類されます。

1. 療養補償給付
療養補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病にかかり療養を必要とする場合に行われます。
(この業務上であるかが労災判定の大事なところです。)

療養の給付及び療養の費用の支給の範囲
① 診察
② 薬剤又は治療材料の支給
③ 処置、手術
④ 病院又は診療所への収容
⑤ 看護
⑥ 移送
が対象なります。ただし政府が必要と認めるものに限られます。
2. 休業補償給付
労働者が業務上の負傷又は疾病にかかりその療養のため働くことができず、そのために賃金を受けない場合には、その4日目から賃金を受けない期間1日につき給付基礎日額の60%相当額の休業補償給付及び20%相当額の休業特別支給金が支給されます。

待期期間について
休業の初日を含む最初の3日間は待期期間といい、休業補償給付は行われませんが業務上傷病の場合は、その間は事業主が休業補償(平均賃金の60%以上)を行うこととなります。

3. 傷病補償年金
療養補償給付を受ける労働者の傷病が、療養の開始後1年6カ月を経過しても治らないで、その傷病による障害の程度が厚生労働省令で定める傷病等級に該当する場合に傷病補償年金が支給されます。傷病補償年金の額は、障害の程度に応じます。 
4.  障害補償給付
業務上の負傷又は疾病が治ゆしたときに、身体に一定の障害が残った場合には、障害補償給付が支給されます。「治ゆ」とは、症状が固定し、もはや療養の効果を期待できず、したがって療養を必要としなくなった状態をいいます。
5.  遺族補償給付
労働者が業務上で死亡した場合には、遺族補償給付が支給されます。遺族補償給付には、遺族補償年金と遺族補償一時金とがあり、労働者の死亡当時の生計維持関係、死亡労働者との続柄、遺族の年齢等によっていずれかになります。
7. 介護補償給付
障害補償年金又は傷病補償年金の第1級の者又は第2級の者(精神・神経障害及び胸腹部臓器障害者の者に限る。)であって、常時又は随時介護を要する者に支給されます。

 
■ 通勤災害」の保険給付について。
通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。
労災保険は、業務上災害のほか、通勤災害についても業務上災害と同様の内容の補償を行うこととしています。

■ 「社会復帰促進等事業について。

被災労働者等援護事業として特別支給金(休業特別支給金や障害特別支給金等)の支給。
社会復帰事業として外科後処置、義肢等の支給や各種アフターケア。

 
● お尋ねの件
荷物の積み降ろし作業中、荷物が落下し足を骨折してしまい、労災保険より療養補償給付及び休業補償給付を受けております。、私は、現在入院加療中ですが、来月末日で定年退職となります。主治医は、今月退院できるが、仕事の復帰は当分出来ないと言われました。しばらくの間、療養・休業が必要となる見込みです。間もなく退職になりますが、退職後も業務上で被った負傷の療養を行う場合、労災保険給付は受けられるでしょうか。

● 答え
労働者が業務上のゆえにより負傷または疾病を被った場合、災害の性質や、負傷または疾病の程度によっては相当長期間療養しなければならないこともあります。
このような長期間に渡る療養の場合、お尋ねのような労働者の(定年や自主)退職の発生という問題です。労災保険給付が、雇用関係の存在している期間中についてのみ補償され、退職等の理由により雇用関係がなくなった場合は補償されないということになると被災労働者の被った損害の一部しかてん補されないことになります。
例えば、
①療養補償給付について、退職後は支給されないとなると、業務上の事由により負傷し療養しているのにもかかわらず、その治療を受けられないという不合理なことになります。 また、

②休業補償給付については、定年退職後は当然に賃金を受けることができなくなるので、休業損害が生じないと思われがちですが負傷していなければ、定年により被災した事業場を退職し、当該事業場から賃金を受けないとしても、他の事業場に再就職し、賃金を得ることもできるからです。

以上のように、業務上の事故に対する補償は雇用関係の存続とは別に考えられることになります。このことは、労働基準法第83条及び労災保険法第12条の5で『補償を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない』と規定されています。

対応例

たとえ、退職の理由により使用者との間に雇用関係がなくなったとしても、支給事由が存在する限り保険給付を受けることができます。

■ 労働相談は一般的な内容のものです。具体的な内容については、当ユニオンへ電話、来所してご相談ください。

 

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