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 国際通貨基金(IMF)によると、日米欧の主要国は2009年度、そろってマイナス成長となる見通しである。景気悪化は底なしの状態で、全世界的な経済恐慌に陥る歴史的な事態となっている。これまで膨大な利益をあげてきたトヨタを頂点とする自動車、電機などの多国籍企業が、世界的な需要減退と円高の中で、年末から大規模な減産体制をしき始めた。その影響は広範に及び、犠牲は中小零細企業、非正規雇用をはじめとする労働者に転嫁されている。
いま何が起こっているのか、アメリカ発の金融危機とは何か、今日の内外情勢を理解する上でのポイントと、建設関連業界の現状をまとめてみた。


ドル世界の終わり  日米「物・金」還流

■ドル還流システム 米国の膨大な借金は、対米貿易で他国が儲けたドルに支えられる。他国が保有するドルは、自国通貨に換金することなく米国内で米国債やファンドを購入して運用される。全て自国通貨に換金すると、日本でいえば円高ドル安になり輸出競争力が低下する。これを懸念して米国内でドルは還流される。ドルの信用が落ちれば崩壊する。

 今日の金融危機の発端は、2007年のサブプライムローン破綻である。
冷戦崩壊以降、アメリカは世界支配を維持するため、意図的に経済と金融のグローバル化を進めた。とくに90年代後半からはブラジル、ロシア、インド、中国等の新興国に投資したドルがアメリカに還流するシステムを形成。2000年のITバブル崩壊後、あり余った資金をアメリカ国内の住宅バブルに振り向けて、ここに他国の資金も呼び寄せ、実際の国内生産力以上の過剰消費を続けた。アメリカに流入した資金の主力は日本の円であり、その中身は日本が対外貿易を中心にして得た膨大な黒字であった。
こうして、日本の労働者が生み出した富の大部分はアメリカに吸い取られ、国内産業推進や庶民生活向上の為に使われず、外需依存の経済体質を強めてきた。 他方、アメリカにとってみれば自国の生産力や競争力の衰退にもかかわらず、他国の労働者が生み出した利潤を自国の赤字補填や個人消費等に振り向けることによって生き延びてきたのである。しかし、もはやドルの信用低下は歯止めがきかない状態であった。 日本の多国籍企業や資本家たちは、資産をドルで保有しているがゆえに、ドル暴落によって自分の資産が吹き飛ぶことを恐れ、ドルの価値低下を何としても押しとどめようと躍起になっている。その結果、彼らは対米従属から抜け出せず、大きなピンチに直面している。しかし、資産をもたない労働者はドルの価値が低下しても失うものはなく、むしろ弱った支配階級を相手に有利な闘いをするチャンスである。 ところで、オバマ政権が発足して期待を集めている。しかし、オバマが実行する需要創出や金融機関等の救済は、結局のところ信用を失ったドルをさらに刷り増しして、避けがたいドル暴落の危機とその被害を拡大しているのであり、アメリカの基軸通貨『ドル』を通じた世界支配体制が末期であることに変わりはない。



政治・経済の転換迫られる日本

日本が落ち行くアメリカを支え続ければ、国民にさらなる犠牲を強いるのは明らかだ。対米従属から脱却し、政治や経済の主体を中小企業と労働者・庶民へ転換すべき重大な転換点にいる。
空前の利益をあげてきた多国籍企業は、アメリカをはじめ世界でモノをつくって売るという、これまでのシステムが機能しなくなったため、事業計画の大幅な見直しを余儀なくされ生産調整や人員削減に踏み切った。人員削減は、2008年10月のトヨタ自動車の期間工3000人を皮切りに急増。本年3月までに非正規雇用労働者だけで40万人が失業するとも予想され、現在では削減対象は正規雇用労働者にも及んでいる。去年まで空前の好景気に沸いた大企業は、利益を株主配当や内部留保といった資本家と自社の保身にあてる一方、まさにその利益を生み出してきた労働者を大量に切り捨てるという暴挙でこの危機の被害を最小限にとどめようとしているのである。 大手企業の内部留保は200兆円を超えると推計され、切り捨てられた労働者全員の生活を当面維持してもあまりある。これを吐き出させて雇用と生活を守るべきである。

製造派遣・期間工・請負労働者失業者数推移(予測含む)
■12月まで「厚生労働省資料」より。1 月は各報道より。2・3 月は日本生産技能協会・日本製造アウトソーシング協会見通しより作成。

経済の混乱を受けて、国内政治もまた迷走している。麻生政権は、はなから解散含みでスタートしたもののタイミングを失い、右往左往しているのが現状である。多国籍企業と資本家の代理人を果たすことで機能してきた政治はもはや通用せず、保守内部で分裂。政党・政界の再編が進んでいる。少なくとも自民党の支配体制は終わりに向かい、来たる衆議院選挙では、民主党が有利に選挙戦を進めるだろう。しかし、民主党内部には日米安保、自衛隊の海外派兵、憲法改悪、核武装について容認する考え方もあり、「よりまし選挙」で政権交代するだけでは、根本的には変わらない。労働組合を中心とする国民的な大運動の高まりが重要である。
そのためには、一つは、政治と経済を中小商工業者・農民・漁民・労働者が主人公たる形へ転換することが求められる。具体的には、国内農林水産漁業の保護・育成、建設・土木のてこ入れ等を通じた内需拡大や、環境産業・医療・福祉・介護・教育の分野で雇用創出すべきである。今一つは、日米安保に反対することである。
対米従属の戦後史上、長きにわたって中小商工業者・労働者・農民・漁民が一部特権階級の利益のために抑圧され、差別分断され、過大な米軍基地負担を強いられてきた。多国籍企業のための利益追求政治から、庶民が豊かな生活を送れるようになる経済と民主主義の政治へ、重大な転換点にある。
労働組合は、日本の労働者はじめ庶民の生活を破壊してきた問題の根源に日米安保があることを明確に指摘して闘うことが重要である。

建設投資激減しわ寄せ中小業者に
2007年度の国内建設投資は52兆3000億円と見通されており、ピーク時(1992年度)84兆円の約60%まで減少。特に、公共投資は大幅に減少しており、95年度の35兆円をピークに、07年度時点で17兆円と約50%まで落ち込んでいる。建設業者数は2000年以降減少の一途をたどり、特に、基礎体力で劣る小規模建設業者は大幅に減り続け、87年時点の約3分の1にまで激減。少ない需要を奪い合い淘汰されている構図が浮かび上がる。(「国内建設投資の推移」「建設業者数の推移」はグラフ参照)。

  加えて、昨今の金融危機の影響をうけた景気低迷で、国内の建設市場は住宅投資、設備投資が冷え込んで縮小傾向をたどり今年度の生コン需要はさらに減少する可能性がある。 このような苦境のなかで昨年12月、阪神地区生コン協同組合が設立された。
阪神協組は、中小企業と労働組合の共生・協働によって確立された協同組合であり、業界再建に向けてまず値戻しに取り組むことを表明。過当競争の原因となる土曜稼動と袋洗いは、段階をおって撤廃することも確認されている。現在の危機は、これまでの一部特権階級を利し、中小企業や労働者など多数を犠牲にするやり方はもはや通用しないことを物語っている。このような時代状況において、セメントメーカーの支配から離れ、真に中小企業の大同団結による協同組合が誕生したことは、歴史的な出来事である。
時代は、共生・相互扶助による業界再建を求めている。そのためには、中小企業の経営が成り立ち、労働者の雇用と生活が守られる適正価格を維持し、利用者や住民の安心・安全に向けて品質保証を徹底することが重要である。

くさり No718 より


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