第9回人権問題シンポジウム開催
同情から怒りへ ガザの真実と責務

 

『かわいそう』という同情から、不正義への『怒り』へ

3月27日、エル・おおさか南館で「パレスチナ《自治区》のジェノサイド~私たちは何を知らなければならないのか~」をテーマに、第9回人権問題シンポジウムが開催されました。講師に、パレスチナ文学・アラブ文学研究の第一人者である岡(おか)さんを招き、現在進行形の虐殺の背景にある歴史的構造と、国際社会の不作為について、魂を揺さぶられるような講演をしていただきました。

美談の裏側にある,不均衡

講演の冒頭、私たちは一つの重要な問いを突きつけられました。事前に学習会で上映した映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』(2025年2月21日公開)について岡さんに伝えたところ返ってきたのは「それを観てどう感じた?パレスチナの青年とイスラエルの青年の『美しい友情』として捉えてはいませんか?」という言葉でした。この問いに、私はハッとさせられました。残酷な現実のなかにある「個人の絆」に救いを見出し、無意識に物語を美化して消費していた自分に気づかされたからです。
映画の表面的なドラマに感動し、対立を超えた個人の絆に希望を見出す。それは一見正しい鑑賞法のように思えます。しかし岡さんは、その視点が「圧倒的な占領者」と「奪われる被占領者」という構造的な権力関係の不均衡を霧散させ、本質的な不正義を覆い隠してしまう危うさを指摘されました。
冒頭、岡さんは「同じような歴史の不正と闘い続けてきた関生にエールを送りたい」と語り、講演が始まりました。

 

愕然とさせられた国際秩序の無力さ

講演では、パレスチナにおける現在の惨状が決して突発的なものではないことが詳述されました。1948年のイスラエル建国以来の占領、そして1967年の第三次中東戦争以降、国連安保理の撤退決議を無視し続けられている占領の実態。占領地に自国民を入植させるという明確な国際法違反が、今なお拡大している現実があります。
何よりも衝撃的だったのは、国際秩序の無力さです。日本を含む国際社会は東エルサレムを占領地と見なし、大使館をテルアビブに置いてきましたが、トランプ政権下でのアメリカの大使館移転はその均衡を破壊しました。国際司法裁判所(ICJ)が占領や入植を国際法違反と勧告しても、強制力を持たないために無視され続けています。この「国際社会の不作為」こそが、パレスチナの人々から希望を奪い、さらなる暴力を生む土壌となっているのです。
報道では「テロ」という言葉が強調されますが、岡さんはその一方的な視点に憤ります。生活の基盤である住宅を破壊し、民族浄化をエスカレートさせるイスラエル側の暴力こそが日常であり、私たちはその因果関係を正しく認識しなければなりません。抵抗の理由を問わずに結果としての暴力のみを非難することは、占領の固定化に加担するに等しいのです。

平和を問い直して怒りを行動の糧に

ガザは、2007年以降、食料や燃料の出入りを極限まで制限された「天井のない監獄」と化しています。岡さんは「戦争がなければ、それで平和なのか?」と問いかけられました。それは、占領下において人間としての尊厳を日々削り取られながら生きる人々の絶望を、私たちは「爆弾が降っていない」というだけで「平和」と見過ごしてきたのではないかという痛烈な問いかけでした。
袋のネズミにされた人々に対し、16年にわたって繰り返される大規模な軍事攻撃と虐殺があります。この地獄のような状況を終わらせるために、何が必要なのでしょうか。岡さんは、必要なのは「かわいそう」という同情ではなく、「不正義に対する怒り」であることを強調されました。「同情」は、相手を自分より弱い立場に置いたまま見下ろす視線に繋がりかねません。しかし〝怒り〟は、人間としての尊厳を共有する対等な連帯から生まれます。
「見ようとしない、知ろうとしない、考えることをやめる」。私たちのこうした小さな無関心こそが、現在のガザのジェノサイドを許容してしまっています。私たちは「当事者意識」を研ぎ澄まし、今ある民主主義と人権の仕組みを最大限に活用して、声を上げ続けなければなりません。

遠い国の悲劇から私たちの問題へと

講演は、会場に響き渡る「Free! Palestine!」の言葉で締めくくられました。今回の学習会を受けて、私たちはパレスチナの問題を「遠い国の悲劇」ではなく、「現代社会の正義が問われている私たちの問題」として捉え直すことができました。
不正義に怒る力を持ち、行動する勇気を奮い起こすこと。それがいま、私たちに課せられた責務です。パレスチナの真実をより深く知るために、岡真理さんの著書、増補版『ガザとは何か』を一人でも多くの方に手に取っていただくことを強くお勧めします。知ることは、共犯者であることをやめ、人間としての矜持を持って変革へ踏み出す第一歩となるはずです。

 

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