石垣島の「要塞化」と離島の記憶を歩く
南大阪平和人権連帯会議は、軍事基地建設や軍港化に反対し、港湾の平和利用を求めるなど、地域で平和と人権を守る市民・労組の共同運動体として活動しています。4月16日から19日の4日間、沖縄現地学習会が開催され連帯ユニオンから4名が参加しました。今回は、急速に「軍事要塞化」が進む石垣島の現状と、周辺離島の歴史・自然・文化について深く学びました。
沖縄が繋ぐ平穏の日
石垣島到着後、ホテルにチェックインを済ませ、伝統文化であるシーサーの絵付け体験を行いました。
2日目は、世界自然遺産の西表島(いりおもてじま)へと渡りました。広大なマングローブ林をクルージングして驚かされたのは、その場を包む圧倒的な「静けさ」と「力強さ」です。
泥に突き刺さる「支柱根」や、大蛇のように地を這う「板根(ばんこん)」。過酷な塩水環境に耐え、自らを支えながら海岸線を守るその姿は、植物による数千年の歳月が築いた「生きるための知恵」そのものでした。生命の循環を支える圧倒的な力強さを目の当たりにし、「命のゆりかご」と呼ばれるこの豊かな生態系を壊す人間の傲慢さを、深く考えずにはいられませんでした。
その後、西表島から水牛車に揺られて海を渡り由布島(ゆぶじま)へ。力強くも急ぐことのない水牛の歩みに合わせ、三線の調べに身を任せていると、日々の忙しさが消えていくような「ゆったりとした時間の流れ」を感じました。竹富島でも水牛車で赤瓦の街並みを巡り、沖縄が守り続けてきた穏やかな時の大切さを再確認しました。
不沈空母への変貌と標的にされる島の闇
3日目、私たちは今回の主目的の一つである「石垣島駐屯地」へと足を運びました。かつてののどかな風景を塗り替えた「要塞化」の現実に一同圧倒されましたが、何より衝撃的だったのは門前に立つ守衛の姿でした。
観光客も行き交う島の風景のなかで、小銃を手にし、即応の構えで立つその姿は、あまりにも異様でした。その殺気立った立ち居振る舞いは、ここが平穏な日常の延長線上にある施設などではなく、紛れもない「戦地」であることを私たちに突きつけてきました。
この石垣島駐屯地は、2023年3月に開設され、ミサイル部隊など約600人が配置されています。隣接地の造成について、政府は「グラウンド」と説明していますが、地元ではオスプレイ等の着陸帯になるのではないかという懸念が広がっています。水源や生態系が破壊され、冷徹な拠点へと変貌していく様は、島の人々の平穏な日々が削り取られていくようです。
高市政権が進める「南西諸島防衛の強化」という名目のもと、島々は再び「不沈空母」へと変貌させられようとしています。自衛隊の配備が進む一方で、有事の際の住民避難計画は依然として現実味を欠いたままです。島に取り残される住民の命が、再び軍事優先の論理のなかに埋没していくのではないかという強い危機感が、参加者一同の胸を締め付けました。
静かに残る特攻壕
続いて訪れた川平湾(かびらわん)では、展望台から絵画のような「川平ブルー」の海を眺めた後、グラスボートに乗り込みました。船底のガラス越しに広がるのは、まさに「天然の水族館」です。色とりどりの熱帯魚がサンゴ礁の間をすり抜け、巨大なジャコガイや悠々と泳ぐウミガメ、イソギンチャクに隠れるカクレクマノミなど、豊かな生態系を間近に観察することができました。
しかし、この美しい海は沖縄戦時、海軍の特攻艇『震洋(しんよう)』の出撃基地でもありました。今も海岸に残る壕を前に、爆弾を積んだベニヤ船で自爆攻撃を強いられた若者たちの犠牲の上に、現在の平和があることを痛感せずにはいられませんでした。
また、「戦争マラリア犠牲者慰霊碑」や、19世紀の悲劇を伝える「唐人墓(とうじんばか)」を巡り、不条理な苦しみのなかで亡くなった先人たちへ平和の祈りを捧げました。戦争マラリアは、軍の命令による強制疎開が招いた「軍による加害」の歴史です。自国の軍隊が住民を死に追いやった事実は、現代の駐屯地問題とも深く重なります。悲劇を風化させず、今の事態を批判的に見る眼差しを持つことこそが、この地を訪れる意義であると再確認しました。
最北端に絶景
最終日は石垣島最北端の平久保崎(ひらくぼざき)へ。サンゴ礁が織りなす絶景のなか、強風を受けて舞うパラセイリングの姿が印象的でした。
サンセットビーチを経て、昼食には珍味「ヤシガニそば」を堪能。旅の締めくくりに訪れた米子焼(よねこやき)工房シーサー農園では、常識を覆す巨大でカラフルなオブジェ群に圧倒されました。山々を背に不思議な造形物が自然と融合する空間は、まさに異次元の世界。石垣島が持つ自由で豊かな生命力を五感で体感しました。
歴史を学んで未来へ繋ぐ
今回の現地学習会は、「沖縄の真実を伝えたい」という情熱に導かれ、観光客の視点を超えて石垣島の「光と影」が表裏一体である現実を深く学びました。
私たちはこの4日間、圧倒的な自然が育む「生命の豊かさ」と、刻まれた戦争の記憶や現在進行形で進む軍事化という「暴力の装置」が、激しくぶつかり合う現場を目の当たりにしました。これらは決して、切り離して考えることはできません。
この島が直面している実態を、単なる「旅の記憶」として完結させてはなりません。沖縄の犠牲の上に成り立つ内地の無関心を打ち破り、現地で見聞きした真実を一人でも多くの人へ伝え広めていくこと。そして、ここでの学びを起点に内地での運動を構築し、軍事化の波を押し戻していくこと。それこそが、現場に立った私たちの責務であり、未来へ日常を繋ぐ唯一の道であると決意を新たにしました。
| 今回の現地学習会をコーディネイトに携わり、アテンドをお願いしていた金井さん。「沖縄の真実を伝えたい」という金井さんの熱い情熱と、 これまでの数々の優しさと教えに深く感謝いたします。その遺志を心に刻み、 謹んでお悔やみ申し上げ、心よりご冥福をお祈りいたします。 |
|---|
TEL 06-6583-5549
FAX 06-6583-5534
Email
web@rentai-union.com