関生太鼓


入管の人権研修に関する情報公開請求
「黒塗り」開示は許されない!

7月7の記者会見で、入管の人権研修に関する情報開示請求に対し、「のり弁」(黒塗り)文書で不開示とされた決定の取り消しを求める訴訟が提起されました。この訴訟は「人権にファーストもセカンドもない」というメッセージを掲げています。

大阪入管で発生した暴行事件が和解成立

本件の訴訟の背景は当時、大阪入管に収容されていたトルコ国籍の男性が、2017年7月12日に「制圧」と称して保護室内で入管職員から暴行を受けて、右肩骨折などの重傷を負わされました。
その後、適切な治療を受けることができなかったとして、国家賠償を求めました。その後、裁判所からの勧告を受けて和解が成立しました。
この和解では金銭的な補償だけでなく、大阪出入国在留管理局長が「本件の事案を強く受け止め原告に対して謝罪するとともに、大阪入管に収容されている者の人権を尊重しつつ、より一層、適正な処遇を行うよう努めることを確認しました」と発言しました。その後、本庁からも同様の通達が出されています。 それを踏まえて、入管職員が収容者の人権を尊重するために、どのような研修や取り組みを行っているのかを確認するために、情報開示の請求を行いました。
ところが、その開示を求めた全てで、いわゆる「のり弁」と言われる黒塗りの文書が出され、一部、タイトルは確認できるものの、肝心な内容は一切確認できないものであったため、不開示決定に対する取消訴訟が提起されるに至りました。

社会全体で議論すべき

中井雅人弁護士は、入管が人権研修の内容を「ナイショ」にしている現状に対し、「これが日本の人権水準なのか」と強く憤り、この問題は司法だけでなく社会全体で議論されるべきだと訴えました。
弁護団の上林惠理子弁護士は、最近の「外国人政策」に対する国民の関心の高まりに触れ、ネットやメディアで活発な「移民と日本人」の議論が交わされているのは、入管自身が「不法滞在者は悪」「犯罪者」といった「官製ヘイト」とも言えるレッテル貼りを続けてきた結果だと指摘します。これにより「クルド人ヘイト」が「日本人ファースト」へと繋がり、今後の選挙結果にかかわらず、入管の人権意識はさらに低下するだろうとの懸念を示しました。

当事者意識の重要性

1965年(昭和40年)に法務省入国管理局参事官の池上努が著書「法的地位の200の質問」で「外国人は煮て食おうが焼いて食おうが自由だ」と記述し、これが4年後に国会で問題視された過去を振り返り、それから60年経った現在でも日本の人権意識が根本的に変化していないのではないかと問いかけました。そして、日本が「人権後進国」と呼ばれる所以がここにあると強調しました。
日本の教育現場では、「差別」や「人権」に関する教育が不足しており、国際人権法学者の藤田早苗氏が指摘するように、道徳の時間で「思いやり」や「優しさ」として教えられてきた現状があります。これらはもちろん重要ですが、「人権」は思いやりや優しさだけでは不十分であり、嫌いな人や全くの他者に対しても、誰しもに与えられる普遍的な権利であると訴えました。
現在、日本社会は人権課題に直面しており、この事件を通じてどれだけ当事者意識を持てるかが問われています。この訴訟の行方に注目が集まります。

 


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