玉城デニー沖縄県知事


沖縄から世界平和を発信する

「慰霊の日」〈全戦没者追悼式〉を考える

6月23日、沖縄は再び「慰霊の日」を迎えました。80年前、太平洋戦争末期の沖縄戦において、おびただしい数の尊い命が失われたこの日、沖縄県糸満市摩文仁の平和祈念公園には、国内外から多くの人々が集い、戦没者に哀悼の意を捧げるとともに、恒久平和への誓いを新たにしました。

平和記念公園にある平和の礎(いしじ)には戦没者が刻銘されてあり、静かに目を閉じ手を合わせるおじい・おばあ、幼い子どもの手を引いて慰霊碑に花を供える若い親たち。それぞれの胸には、家族や親族を失った痛み、あるいは語り継がれてきた戦争の悲惨な記憶が刻まれています。彼らの表情には、犠牲者への深い哀悼の念とともに、「二度とこのような悲劇を繰り返してはならない」という揺るぎない決意が滲んでいるように感じました。

沖縄から世界平和に繋がる

式典では、玉城デニー沖縄県知事が平和宣言を読み上げ、「戦後80年はひとつの通過点。私はたとえ、すぐに変化はなくてもこの沖縄から平和を発信し続け、行動することが世界平和に繋がるものと信じている」 と述べ、沖縄が平和発信の拠点となることへの強い決意を示しました。
また、世界的な紛争や核の脅威が激化している現状に言及し、「苦難の歴史を歩んできた沖縄は、命どぅ宝を何よりも重んじ、争いのない平和な世界を切に願っています」と、平和への強い希求を訴えました。
知事の言葉一つひとつに、県民は深く頷き、その思いを共有していました。「私たちの声は本当に届いているのか」という諦念と、「それでも声を上げ続けなければならない」という使命感が、会場全体を包み込んでいたように感じられます。

県民の切実な思い

一方、式典に参列した石破茂内閣総理大臣は、式辞のなかで、「沖縄の基地負担軽減に全力を尽くす」と述べました。
歴代の首相が口にしてきた「負担軽減」という言葉が、実態として基地問題の根本的解決につながっていないことへの不満を募らせ、「抑止力」という名の下に、なぜ沖縄がこれほどまで基地負担を強いられ続けなけさばならないのかという強い怒り。参列者が挨拶をする石破首相に対して「声をあげろウチナンチュ、戦争になるぞ。総理約束しろ、沖縄を戦場にするな」と声をあげました。
日米地位協定の改定についての言及を控えた石破首相と県民の実感との間には、依然として深い溝が存在することを改めて痛感させられました。

戦場に駆り出されて

私たちにとって、戦争は雇用を奪い、生活を破壊し、そして何よりも生命の尊厳を根底から揺るがす最大の敵です。沖縄戦の悲劇は、労働者が戦場に駆り出され、故郷を失い、家族が離散し、あらゆる形で尊厳が踏みにじられた歴史を物語っています。戦争は、社会の基盤を根底から破壊し、労働者の権利や生活を守るという労働組合の使命を不可能にするものです。私たちは、二度と労働者が戦場の犠牲とならない社会を実現させなければなりません。
さらに、基地問題は単なる安全保障上の問題に留まりません。基地があることで、周辺住民の生活環境は悪化し、騒音被害や環境汚染、そして事件・事故のリスクに常に晒されています。
これは、県民の生活の質を著しく低下させるものであり、看過できるものではありません。
私たちは、基地問題の根本的な解決なくして、真の平和と県民の生活の安定はあり得なません。
辺野古新基地建設についても、民主主義の原則に基づき、県民の意思が尊重されるべきであり、政府による一方的な政策決定は、地域社会の分断を招き、ひいては労働者の団結を阻害する要因にもなりかねません。
私たちは、辺野古新基地建設の中止を求めるとともに、沖縄の基地問題が全国的な問題として捉えられ、国民的な議論が深まる運動を展開しなければなりません。
そして、労働者の国際連帯を強化し、人種や国籍、思想の違いを超えて、平和と労働者の権利を守るための運動を推進しなければなりません。戦争の愚かしさは、私たちに計り知れない犠牲と苦しみをもたらす一方で、分断と憎悪を煽り、人間の尊厳を奪い去ります。対話と相互理解を放棄し、力による解決を志向する限り、真の平和は訪れません。

次世代に繋げよう揺るぎない平和を

「慰霊の日」は、過去の悲劇を忘れず、しかし単なる感傷に浸るだけの日ではありません。それは、私たちがこれからどのように生き、どのような社会を築いていくべきかを問い直す日です。
沖縄戦で犠牲となったすべての人々の魂に報いるためにも、私たちは、平和への揺るぎない決意を再確認し、戦争のない社会、そしてすべての労働者が尊厳をもって働き、暮らせる社会の実現に向けて、今後も粘り強く運動を続けることが求められています。
玉城知事の発言からは、沖縄の平和への強い願いと、国際社会への積極的に貢献することや国際平和研究や軍縮、戦争遺産の保存に貢献する決意が受け取れ、「現在を生きる私たちには、現実と教訓を保存し、次世代に伝える使命がある」という言葉からは、記憶の継承がいかに重要かが伝わってきます。
この「慰霊の日」が現在そして未来を見据えた『平和構築への強い意思表示』であることを深く認識し、その意義を改めて問い直す必要があります。

 



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