関生太鼓


労働基準関係法制研究会報告書と現状の動きについて

 

労基法が40年ぶりの〝大改正〟?

4月25日、京都駅前のキャンパスプラザ京都で、京都地域メーデーのプレ企画として、労働基準関係法制研究会報告書と現状の動きについて学ぶ学習会が開催された。主催は、京都地域メーデー実行委員会。学習会では、講師の塩見弁護士が「労基法が40年ぶりの大改正―労働基準関係法制研究会報告書と現状の動きについて―」と題して講演した。以下、講演の要旨を述べる。

40年に一度の改正をねらう厚労省幹部

2024年1月23日から厚労省の「労働基準関係労働法制研究会」(労基法研)が開催され、本年1月8日に「労働基準関係法制研究会報告書」(労基法研報告書)が公表された。労基法研開催当初は、労基法「40年に1度」の大改正と厚労省幹部が発言するなどして開催され、話題を呼んだが、結論から言うと労基法研報告書は当初の内容からすると相当にマイルドな内容となっている。
しかし、この間の議論において財界が労基法を骨抜きにしたいという明確な意志を露わにしており、今後の動静に最大限警戒し、労働者の権利を損ねる内容が出てきた際には、大々的に反対運動を展開しなくてはならない。

反対運動で何とか阻止した規制緩和

労基法研の開催は2018年の「働き方改革関連法」の5年後見直しを兼ねている。そこで学習会では、働き方改革以来の労基法をめぐる議論を概観した。
2018年「働き方改革」の狙いは、規制緩和による雇用流動化と外国資本・グローバル企業の参入促進とされてきた。その本丸は労働時間規制の緩和であり、具体的には、高度プロフェッショナル制度の導入、裁量労働制の大幅緩和であった。
高度プロフェッショナル制度は、2024年3月時点で対象となっている労働者は全国で1340人に過ぎない。財界はより広範な範囲の労働者をこの制度で働かせたい意思を露わにしているが、強い反対運動により厳格化し、使いにくい制度となり歯止めになっている。
裁量労働制は、いくら働いてもあらかじめ定めた時間(みなし時間)働いたものとみなす制度である。この制度は、安倍首相のデータ偽装問題で反対運動が広がり、法案から削除された。
この間、働かせ放題にしたい財界の意志に抗して、反対運動を強めることでなんとか歯止めをかけてきたということだ。

労使合意を糸口に労基法破壊を狙う

2023年には労政審労働条件分科会に「新しい時代の働き方に関する研究会」が設置され、同年10月には報告書「新時代研報告書」が公表された。同研究会は、働き方が多様化しより柔軟な働き方を求める労使双方のニーズがあるとして、労使の適正なコミュニケーションがはかられるような労働基準法制とすることが述べられている。これはすなわち、労使が合意すれば、基準を排除しても構わないということを意味している。
さらに、2024年1月に経団連が公表した「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」では新時代研報告書を受けてより露骨な表現で労働基準の強行法規性を破壊する意志が明確にされた。すなわち、「労使の議論を尊重し、労働基準法制による画一的規制の弊害を最低限に」し、労働時間制のデロゲーション(逸脱)の範囲拡大等を主張している。
そのうえで、労基法研研究所は新時代研報告書よりもかなりトーンが抑えられたとは言え、「労使の合意等の一定の手続の下に個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて法定基準の調整・大体を法所定要件の下で可能とする」などとされており、個々の規制の見直しではなく、労使合意によるデロゲーションを抜本的に可能にすることが本報告書の本質・目的であり、最大限に警戒しなくてはならない。
塩見弁護士は、労基法1条を引いて、いかに労使が合意しようとも「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」ものであることを強調した。



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