賃上げ税制で本当に賃金が上がるのか


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教育部では、学習を通じて執行委員や組合員のレベルアップに力を入れています。今月のテーマは「賃上げ税制について」です。

賃上げ税制で本当に賃金が上がるのか

2022年度税制改正の焦点となっている賃上げ税制の強化に関し政府は企業の法人税額から差し引くことができる控除率を大企業は最大30%、中小企業は最大40%に引き上げる方向で調整していることが3日分かった。岸田文雄首相が掲げる「成長と分配の好循環」の実現に向け減税額を大幅に増やし企業に積極的な賃上げを促す方針なのだが、その効果や実態はどうなのだろうか?

賃金引上げ企業に法人税を軽減する

さて「賃上げ税制」とは、一体どういった制度なのだろうか?
一定の賃上げ条件などを満たすと、最終的な法人税額を軽減することができる仕組みで人件費増加分の最大控除率は大企業は20%、中小企業は25%に設定されており、見直し案が承認されれば大幅に制度が拡充されることになる。また教育訓練費を一定額増やすと大企業で5%、中小企業で10%増額される。ここでいくつかの疑問や注意点を整理していく。

中小零細企業では賃金の引上げない

そもそも賃上げ税制で中小企業の法人税控除率を40%に引き上げても賃上げにはつながらないのではないかといわれている。
その理由として「賃上げ税制」で賃上げした企業の法人税負担を軽減する場合、業績が好調な企業では従業員の賃上げをするインセンティブ(目標を達成するための刺激)が働くが、中小企業ではもともと業績が赤字の企業が多く従業員の賃金を引き上げるインセンティブにはならないからといわれている。結局、平均賃金は上がらず、中小企業で働くビジネスバーソン(経営者や実業家をはじめ会社員や事務員など企業で働く人、個人事業主やフリーランスで生計を立てる人など)が大企業で働くビジネスパーソンより圧倒的に多いので賃上げ税制を拡充するだけでは、ほとんどのビジネスパーソンの賃金は上がらないままになるのではないだろうか?

大企業優位の政策

基本給を上げればなかなか減額することができないことから夏季・年末一時金などで対応を求める企業の声も浮上している。あくまで平均賃金の増加という仕組みであるため企業として有用とする社員の賃金だけを増額することも可能であり、また外注から非正規雇用に切り替えることにより数字の上では人件費の増加を達成するということもできるのではないかと危惧する声も上がっている。
また、賃上げに協力的でない企業に対してはペナルティーとして開発研究費の一部が控除対象外になる。 このような政策は強者を助け弱者を淘汰する政策に他ならない。

すべての労働者に還元するには減税

本来ならば、所得税・住民税・社会保険料などの負担を緩和し手取り額を増額する、ガソリン税や消費税率を下げ実質賃金を引き上げるなどすればいいのではないだろうか?分断と差別を生む給付金ではなく、大事なのは低所得者を優遇できるシステムであり、困窮している人々を援助できるようにしていかなければならない。


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