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『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読み解こう! シリーズ ②
異常な日本、異常な政府の矛盾と過ち

FEBRUARY 2th, 2017

矛盾だらけの異常な国、日本。「国民を犠牲にして、常にアメリカの言いなりでいる政治家や官僚たちは、実際はアメリカの交渉担当者から心の底から軽蔑されている」との証言がいくつもあります。その背景にはいったい何があるのでしょう。


これでも原発続けますか

Highlight

 引用・参考文献:
日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか 矢部宏治・著
集英社インターナショナルのホームページで読めます こちらから

帰還困難区域
バリケード封鎖されている帰還困難区域の写真

原発事故以来、福島の20万人もの人々は家や田畑を奪われ、「すべてを捨てて安全な場所へ逃げたほうがいいのか」「今の場所にとどまって、生活の再建を優先したほうがいいのか」という究極の選択を迫られることになりました。

原発利権 構造
原発利権 構造

置き去りにされる被害者

もっとも異常なのは、この大惨事の加害者が罰せられず、被害者には正当な補償が行われないことです。被災者たちがどうやって年を越せばいいかと頭を抱えているとき、東京電力の社員たちには年末ボーナスが支給されました。

普通の国なら、大訴訟団が結成され、空前の損害賠償請求が東京電力に対して行われたはずです。しかしそうはならず、ほとんどの人が国のつくった「原子力損害賠償紛争解決センター」で事実上の和解をし、東京電力の言い値で賠償を受けるという道を選択したのです。それは、最高裁までいったら必ず負けるとみんなよく分かっているからでしょう。
そして、実際に子供の被ばく問題でそのような結果になりました。2013年の仙台高等裁判所の集団疎開裁判の判決では、ほぼ確実に数年以内に、甲状腺がんになった子供たちが大量に出現すると裁判所が認める判決を出したのに、それを覆す判決が出され、住民側は敗訴となりました。判決文の前段と後半に整合性のないのは、沖縄の米軍機・騒音訴訟と全く同じ構造です。

沖縄と福島の違いは、沖縄には真実を伝える新聞社がきちんとした情報を伝えていることや、政治家・大学教授や弁護士など不条理ときちんと戦う人が何人もいるのに対して、福島県にはまとまった社会勢力が存在しないことです。もちろん政府は情報を隠蔽するでしょうし、米軍基地問題のように、関連するアメリカの機密文書が公開されるまでには、30年以上かかります。

エリート官僚が守り続ける「利権」
「原発の再稼働によって利益を得る勢力」の存在ももちろん問題ですが、より重要な問題は、「止めるためのシステム」についてです。
福島の事故を教訓にドイツやイタリアは脱原発を決めました。台湾も市民デモによって新たな原発建設が中止に追い込まれました。事故の当事国の日本でも、もちろん圧倒的多数の国民が原発廃止を望んでいるし、すべての原発が停止した2013年の夏に電力は十分足りることが露呈しました。それなのに、日本で原発を止められない理由は、「密約法体系」にあります。つまり、アメリカ政府との交渉では、どうしても相手の言うことを聞かなければならない。しかも国民の目には触れさせられない最高度に重要な合意事項を、交渉担当者間の秘密了解事項としてずっとサインしてきたのです。

密約の数々は、国際法上は条約と同じ効力をもっており、もともと日本の法律よりも上位にあります。さらに、アメリカの誘導で「砂川裁判最高裁判決」によって日本の憲法より条約や密約上位にあることが確定しているのです。その「密約法体系」こそが、沖縄や福島で起きている人権侵害をストップできず、裁判所が不可解な判決を出し、日本の政治家が選挙に当選したあと公約と正反対のことばかり行う原因です。エリート官僚たちは、国民や憲法よりアメリカから与えられる「利権」に執着しているのです。

原発や基地を止められない法的構造
 憲法とは国民が官僚をしばるくさりです。「『法律が憲法に違反できる』というような法律はいまはどんな独裁国家にも存在しない」というのが世界の法学における定説だそうです。
しかし、現在の日本の現実は、法律どころか官僚が自分たちでつくった政令や省令でさえ、憲法に違反できる状況となっています。憲法は機能停止状態に追い込まれ、官僚たちによって平然と憲法違反が繰り返されています。
官僚たちがさじ加減一つで、国民への人権侵害を自由に合法化できる法的構造があり、その上日米原子力協定という日米間の協定で「廃炉」や「脱原発」について日本側だけでは何も決められないようになっています。条文ではアメリカ側の了承なしに日本側だけで決めていいのは電気料金だけだそうです。このような法的構造の問題が原発を止めることのできない要因になっています。しかし、官僚たちは原発の利権は得ても常に被害者の側にいません。

約20年にわたって福島・浜岡・東海などで14基の原発建設を手掛け、長年の被曝で亡くなった現場監督の平井武夫さんが残した手記があります。
電力会社による「原発は絶対安全だ」という洗脳教育を自身も20年行ってきたという生々しい事実や、事故隠ぺいの数々。危険なのは、老朽化した原発だけでなく熟練の職人はほとんどおらず、作業員の98%が経験のない素人になっていることなど驚くべき事実が書かれています。

いま日本人自身が問われている問題
 ナチス体制で大量虐殺の犠牲者となったユダヤ人たちは、なぜ時間通りに指示された場所に集まり、おとなしく収容所へ向かう汽車に乗ったのでしょうか。なぜ抗議の声をあげず、処刑の場所へ行って自分の墓穴を掘り、裸になって服をきれいにたたんで積み上げ、射殺されるために整然と並んで横たわったのでしょうか。なぜ自分たちは1万5000人もいて監視兵が数百人しかいなかったとき、死にものぐるいで彼らに襲いかからなかったのでしょうか。 それはまさに今の私たち日本人が問われている問題です。

なぜ自分たちは人類史上最悪の原発事故を起こした自民党の責任を問わず選挙で勝利させてしまったのでしょうか。なぜ、子どもたちの健康被害に目をつぶり、被曝した土地に被害者を帰還させ、国民の命を危険にさらして子どもたちの未来を奪うような原発の再稼働や輸出を進める政府を容認しているのでしょうか。なぜ自分たちは最も危険な日本の権力者の問題に目を向けず、真実を覆い隠す大手マスコミの扇動にのって、韓国や中国といった近隣諸国ばかりをヒステリックに攻撃しているのでしょうか。
そのことについて、歴史をさかのぼり本質的な議論をする時期にきているのです。


四つのなぜ?

1 小さな日本で原発事故が起き、事故の責任者は誰も罪に問われず、被害者は正当な補償を受けられないのはなぜ?
2 東大の教授や大手マスコミは「原発は絶対に安全だ」と言い続けたのはなぜ?
3 事故が起きて、ドイツやイタリアでは原発廃止が決まったのに、当事国の日本では再稼働を推し進めるのはなぜ?
4 福島の子供たち中心に明らかな健康被害が起きているのに、政府や医療関係者たちは無視し続けるのはなぜ?


シリーズ③へと続く
 シリーズ①はこちら

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