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入れ墨調査拒否者への不当処分撤回11.28集会

2014年11月28日、エル大阪で開かれた『入れ墨調査拒否者への不当処分撤回11.28集会』-橋下市長の好きにさせへんぞ!-に参加した。

大阪市・橋下市長は2012年5月に大阪市の全職員に対して「入れ墨に関する調査」を実施した。これは「大阪市職員が入れ墨を見せて市民を脅した」という理由で行われた。このことは多くのマスコミで取り上げられたので知っている人も多いと思う。しかし、後にそのような事実は全くなかったことが大阪市議会で明らかになっている。こちらはマスコミがほとんど取り上げなかったので、未だにこの事実を知る人は少ないだろう。

このありもしない「入れ墨でおどした事実」を理由に強行された調査は、人事異動や配置転換の資料として利用され、また、入れ墨の有る無しにかかわらず、調査用紙の記入・提出は職務命令で強制され、市長命令への絶対服従を強いるものだ。

この入れ墨調査に最後まで従わなかった6名は懲戒処分を受けた。この6名は、勤務地が病院、交通局、水道局、建設局、区役所など、それぞれ別々で、所属労組も異なるために、地方公務員法適用職場の者は人事委員会へ、そうでない者は裁判所に訴えて闘いを展開させてきた。

今回の集会は、今まで別々に闘ってきた6名が初めて一堂に会して「共通の敵に対して共同で闘う」ために、6人全員とその支援者・支援団体が共同で企画した統一集会であり、極めて画期的な集会だ。

今回の集会でとても印象深かったのが、弁護団からの報告として登壇したF弁護士の話しだ。この「入れ墨調査」では、職場の管理職や所属労組の役員までもが、橋下市長を恐れて調査に協力しろと圧力をかけてきたという。
F弁護士はかつてナチス・ドイツで数百万人のユダヤ人を強制収容所送りにしたアドルフ・アイヒマンの例を出した。アイヒマンは裁判で自身の行為について「命令に従っただけ」だと主張した。また、この集会の2日前に勝利判決がでた大阪市教職員組合の教育研究集会の会場不許可裁判では、現場の小学校校長は、「市の条例に従っただけ」と言った。この二つの事例についてF弁護士は「自分で考えることを放棄し、上からの命令にただ従うようになれば、人間はどこまでも残酷になれる」と言った。教研集会の裁判で裁判長は、「条例に従うことは重要だが同時に憲法を遵守する義務もある」と述べ、市が学校を貸さない根拠とした労使関係条例の「労組活動へ便宜供与しない」とする条文に対し、「適用すれば団結権を侵害して違憲」との判断を示した。

この集会の後、2014年12月17日に6名の内の1人であるYさん(*)が大阪地裁で勝利判決を勝ち取った。地裁は、入れ墨調査について「差別を生む恐れのある個人情報の収集を禁じた市条例に違反する」として処分を取り消し、110万円の支払いを市に命じた。
Yさんを含む6名の原告は、この入れ墨調査を「憲法に対する思想的な踏絵」と表現し、Yさんは「憲法に従って判断した」という。

この話を聞いて、「自ら学習し、自分で考えて行動する」ことの大事さを改めて考えさせられた。例えば、公務員の腕に入れ墨が見えれば不快感を持つ市民は多いだろう。しかし、それは個人的な感情の発露であり、その感情に囚われすぎると物事の本質を見失ってしまう。そして、そのことを深く考えることをしなければ、上の命令に従い理不尽な命令を強要する管理職者や労組役員のようになってしまうのだ。

仮にそのようなことがあれば、その時に個別に適切な判断をすれば良く、今回の入れ墨調査は全く別の次元の話だ。入れ墨に不快感を示すのも個人の自由なら、入れ墨をするのも個人の自由なのだ。それを市長という権力者が強権を持って「入れ墨イコール悪」という図式に当てはめようとしたのが、今回の入れ墨調査の本質だ。これは橋下市長が自らに反抗的な職員や労組に対して強権支配を目論むと同時に、一般大衆に向けて「入れ墨イコール悪」「橋下イコール正義」を印象付けようとした印象操作にすぎない。在りもしない「入れ墨脅迫」で、全職員を強制的に規制しようとするあたり、橋下市長の政治手法がファシズムとかけてハシズムと揶揄されるのも当然だ。

日本では日本国憲法第21条第1項において「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と規定されている。日本国憲法は戦争へと突き進んだ国家を止める術が無かった反省から生まれた国や権力を規制する国の最高法規だ。一連の判決はいずれも、憲法の立法趣旨を勘案し、団結権や個人のプライバシーを尊重する判断を下している。

6名の原告は憲法を遵守すべき公務労働者として、この入れ墨調査を「憲法に対する思想的な踏絵」と看破し、職場での孤立にも怯むことなく、市長という強大な敵に敢然と立ち向かった。これは称賛に値するすばらしいことだと思う。


参考 (*) Yさんの勝訴を報じる報道各社

毎日 入れ墨調査回答拒否:大阪市職員の懲戒処分を取り消し

産経 入れ墨訴訟

朝日 入れ墨調査拒否で処分は不当

連帯ユニオン議員ネット