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第11回2011多民族共生人権研究集会
7月20日、大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)で『第11回2011多民族共生人権研究集会』(主催:同実行委員会)が開催されました。

集会は午前中の全体会と午後からの分科会とに分けて行われ、全体会は〝J.A.T.D.にしゃんた〟(注1)さんの落語と、にしゃんたさんと〝露の新治〟(注2)さんの『二人会』を記念講演として行いました。分科会では第1分科『沖縄から考える多民族・多文化共生』、第2分科『改正入国管理法の問題点と外国人市民の生活実態から共生のあり方を考える』をそれぞれのテーマとして場所を分けて行われました。連帯ユニオンからは垣沼地本執行委員長と役員1名、機関紙部員1名が参加しました。

   開催趣旨

同集会は
①真の多民族共生社会を実現するため、在日外国人の人権が侵害されることなく、地域社会の「住民」として共に活かしあうことができる法制度の確立をめざす。
 
②在日外国人に対する差別の実態を把握し、行政や企業、教育、福祉、NPO活動など現場での実践を積み上げることで、外国人住民の人権尊重について啓発し、多民族・多文化共生社会の実現をめざす。
の2点を開催趣旨に、大阪府教育委員会や各テレビ放送局など多数の団体から後援を得て開催されました。
 

 全体会(午前)  落語で多文化共生問題を興味深く

全体会は午前10時半に7階大ホールで開始。全500席が埋まり立ち見が出るほどの盛況でした。

手話通訳と共ににしゃんたさん 

主催者挨拶と来賓挨拶の後、記念講演としてスリランカ生まれで京都在住のJ.A.T.D.にしゃんたさん(落語家、タレント、博士、大学准教授、NPO法人多民族共生人権教育センター理事)が落語を一席。にしゃんたさんは自らが体験した日本・スリランカ文化の交流経験を交えつつ、町内会に様々な外国人がいる模様を面白おかしく語ってくださいました。


 
次に落語家・露の新治さんも加わって『露の新治・にしゃんた二人会』が行われました。


      露の新治・にしゃんたさんの落語風景
露の新治さんは人権講演会の講師としても有名な落語家さんで、『新ちゃんのお笑い人権高座』と題した落語を各地で披露しています。

 


 第1分科(午後)  沖縄から考える多民族・多文化共生

午後からの分科会は大ホールを第1分科として『沖縄から考える多民族・多文化共生』をテーマに、

①〝「日本」とのあつれきから「沖縄」が求めるもの〟と題して平良修さん (日本キリスト教団沖縄教区牧師)、

②〝今、ヤマトンチューに求めること〟と題して新里健さん (京都新聞社記者)

のお二人を講師に講演が行われました。講演後にはコーディネイターとして多民族共生人権教育センター理事の岩山仁さんが入り、平良さんと新里さんのお二人をパネリストとしてパネルディスカッションが行われました。

 

 ①  「日本」とのあつれきから「沖縄」が求めるもの

平良修さん講演(要旨)
日本を知る重要な切り口としての沖縄。沖縄という鏡に映しだされる日本は、どういう国家か?また、1909年「日韓併合条約」に見る日本とはどういう国家なのか。
沖縄で「あなたは自分のことを日本人だと思いますか?」という問いかけをすると、「私は日本人ではない。沖縄人だ」と4割ほどの人が答えるという。その理由に日本列島唯一の亜熱帯自然の中で形成されたユニークな民族性と文化があり、ヤマトンチュになじめないウチナーンチュの姿が見える。日本文化への同化を強要されながらも失うことの無かった沖縄独自の文化とDNAが完全日本化を拒否する。
また、日本国による植民地支配への抵抗感と不信感が究極的な日本化を拒否する。沖縄は日本国の中にありながら、「共生」を拒まれているという実感がある。「私にとって沖縄の心とは、日本人になりたくてなりきれない心だ」と西銘順治元沖縄県知事は言った。
歴史的には、「琉球処分(※)」と言われるものがあり、「〝処分〟とは何事だ!」という思いが沖縄人にある。

(※)1871年に全国で廃藩置県を実施した明治政府は、1872年(明治5年)、琉球王国を強制廃止して琉球藩を設置した。あくまで一国の形態を維持している琉球国(藩)にごうを煮やした日本政府は1879年(明治12年)4月4日に琉球処分を行い、日本の一県として廃藩置県を断行した。即ち、軍隊と警官を派遣して琉球藩の廃止を宣言し、鹿児島県に編入した。同年中に沖縄県を設置し、薩摩以前の宗主国である清国との関係を重視する王族士族の抵抗(サンシー事件など)を退けた。一部の抵抗者は清に亡命し、琉球回復の政治活動を行い、彼らは脱清人といわれた。しかし日本政府が最も危惧した清国の武力介入は結局行われず、琉球王国は中央集権的近代日本国家に組み入れられて消滅した。(wikipediaより抜粋)

講演者は琉球処分を4次に分けて考える。
第1次琉球処分=1879年 廃藩置県 
第2次琉球処分=1945年 40万人もの非戦闘員(住民)を巻き込んだ地上戦。
第3次琉球処分=1952年 日本国独立の代償としての沖縄切り捨て。
第4次琉球処分=1972年 沖縄の心を踏みにじった再併合としての日本復帰。
とする。

沖縄民衆が日本政府による差別を現実的に一番感じるのは日米合意による米軍基地の存在。普天間基地問題では〝第5次琉球処分〟の様相を呈している。
日本本土の民意は尊重し、沖縄の民意(県外・国外へ80%)は無視する日本政府の不平等、不正義。〝日米合意の取り消し〟しかないにも関わらず、米国に隷属し続ける日本国政府の姿が見える。
また、「加害者」として結果責任を負わされていることに沖縄の苦悩がある(ベトナム人に「魔の島」と呼ばれた沖縄)。ベトナム戦争や中東での米軍活動に沖縄から米軍機が飛び立っていることで、沖縄住民は報復攻撃に脅えた。
目指すべきは、国益のための利用価値としての沖縄ではなく、人間の住む島として根源的価値の故に尊ばれる沖縄。共生に不可欠なパートナーとしての沖縄。具体的な手がかりとして、沖縄の共生を阻害している日米安保の破棄を。そのための国民運動を。
日本国によって抑圧され、共生を拒まれている民族だからこそ、沖縄はその痛みをバネにして共生の正当性と可能性を追求していく素地と願望を持つことが出来る。国家を相対化し、国家を超えて生きる人間としての共通点に注目したい。そのために国境を限りなく低くして、民際を築く努力を。沖縄は対日本という枠から解放され、沖縄と日本という閉塞感から外に出て、少なくともアジアの一員であるとの開かれた視点から、沖縄自体を新しく位置づけなおし、「万国津梁(ばんこくしんりょう=万国の架け橋)」に再生する道を求めたい。〝住んでいるのは日本、生きているのは世界(都裕史さんの言葉)〟。(レジュメ参考)

平良修(たいらおさむ)
日本キリスト教団沖縄教区牧師  昭和6年12月15日生まれ。
東京神学大とアメリカのジョージ-ピーボディー大を卒業。生地沖縄の日本基督(キリスト)教団佐敷教会牧師。昭和41年沖縄キリスト教短大学長となる。同年琉球列島米民政府高等弁務官アンガーの就任式で、沖縄の本土復帰の願いを主旨とした祈りをささげ話題となる。

 

 

 ②  今、ヤマトンチューに求めること

新里健さん(レジュメ「取材ノート(京都新聞記事)」から抜粋)
米軍普天間飛行場の移設先が争点となった沖縄県知事選は「県外」を訴えた現職の仲井真氏が当選した。京都や大阪と縁のある「沖縄2世」からは、「ヤマトンチュに高みの見物は許されない」「本土に移設して基地負担を平等にすべきだ」と、本土の人々の覚悟を問う声が強まっている。
「日本を守るために基地が必要だとヤマトンチュが考えるなら、ウチナーンチュばかりに基地を押しつけず、自分で引き受けてほしい。そんな民意が反映されたと思うし、私も同感」。大阪市大正区に住む主婦(62)は知事選の結果について、そう語った。
母親は、日米合意で普天間飛行場の移設先とされた名護市辺野古の出身だ。戦前、大阪の紡績工場に単身で出稼ぎに来て、京都市出身の父と結婚。沖縄出身者が多く暮らす大正区に移り住んだ。当時の大阪では随所に「職工募集 ただし朝鮮人、琉球人はお断り」という張り紙があった。沖縄人は「二等国民」扱いだった。母の遺骨は京都市に眠る。
この主婦は知事選期間中、本土の人から「誰が勝ちそうなの」と面白半分で聞かれるたびにいらだちを覚えた。「高みの見物を決め込むなら納得いかない。ヤマトンチュは観客ではなく、振る舞いが問われる主役のはずなのに」。自身は大正区で生まれ育ち、今は地元で学習会に参加する。「関空や神戸空港は沖縄と違って近くに民家はない。移せる」「日米安保条約の条文には、基地を沖縄に置くとはどこにも書かれていない」「朝鮮半島情勢が気になるなら、基地は北陸に置いた方が近い」「移設候補地のグァムは沖縄と同じ『大国の植民地』。マイノリティーである島民に負担を押しつけるのは良くない」。沖縄にルーツを持つ参加者からはこんな意見も出る。
普天間飛行場の移設先を辺野古とする政府方針に対する支持率の変化が、共同通信の世論調査結果から分かる。鳩山政権が「最低でも県外」の公約を覆した直後の5月末は25.4%にとどまったが、わずか10日後、菅政権が発足し日米合意尊重を表明すると52.2%に倍増した。本土の人の多くが、鳩山政権の退陣とともに県外移設を忘却する。という実情がうかがえる。
勉強会の企画に携わる沖縄2世で、「関西沖縄文庫」を主宰するKさん(57)は、知事選の真の争点は本土の人たちの心性だったと振り返る。「本土移設は、ヤマトンチュが普天間移設を自分の問題として考える際の具体策の一つ。基地が集中する沖縄の現状を黙認してウチナーンチュへの差別を続けるのか、自ら引き受けて差別をやめるのか。仲井真氏の当選によって、一層鋭くヤマトンチュの覚悟が問われるようになった」と指摘する。
人口が集中する(京都の)洛中に基地が移設されたら。湖国の住民が愛する琵琶湖を埋め立てて基地が造られたら。その時も「日米安保は重要」と胸を張って言い切れるか-。沖縄人が長く過重な基地負担を強いられてきた主因は、京滋を含む本土の人々の無関心や「無視」にある。沖縄を直視するために必要なのは、ほんのわずかな想像力だ。

新里健(しんざとけん)
新聞記者 2002年京都新聞社入社 京田辺支局、社会報道部などをへて2009年から洛西総局。大山崎町を担当し、同時に沖縄をめぐる問題も取材。沖縄県出身。

 

 

 第2分科(午後)  パフォーマンススペース

並行して第2分科が1階パフォーマンススペースで行われ、『改正入国管理法の問題点と外国人市民の生活実態から共生のあり方を考える』をテーマに、
①草加道常さん(RINKすべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク)、
②稲津秀樹さん(関西学院大学大学院社会学研究室研究員)、
③玉田エミリア美恵さん(なら・シルクロード博記念国際交流財団ポルトガル語相談員)
の3氏が発題者としてそれぞれ問題提起を行いました。

 
①草加さんは、1970年代に在日コリアンへの差別撤廃を求める取り組みに参加。80年代には外国人登録法の指紋押捺問題に取り組みました。90年代からニューカマーの家族の生活相談を行い、外国にルーツをもつ子どもの担当となり、在留資格の問題によって強制送還される子ども達の支援、母語保障や継承語教育などに取り組んでいます。

草加道常
『RINK(すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク)』事務局員。著書に『外国人・民族的マイノリティ人権白書』(明石書店)、『先生、日本(ここ)で学ばせて!』(現代人文社)、『外国籍住民との共生にむけて』(現代人文社)、『人権年鑑2009』(解放出版社)いずれも共著。

草加さん発題
●2006年の「多文化共生」を目指すとする総務省「多文化共生の推進に関する研究会報告」や外国人労働者問題関係省庁連絡会議「『生活者としての外国人』問題への対応について」が、外国人を管理監視の対象とすることを前提とするものであることは、今回の改定入管法が外国人の管理と監視を強化し、外国人登録法での刑事告発が大量になされていた80年代以前に戻すものだということからも明らかである。今回の改定入管法は、かつて外国人登録法が在日コリアンに「萎縮して生きろ」といったことを再び他の外国人に迫るものとなっている。外国人の管理法ではなくて、権利法(外国人人権基本法)の制定こそが求められている。
 

 

 
②稲津さんは、外国人登録人口が公式に200万人を突破したと言われる中、外国から日本への移住者の日常に寄り添いながら、彼・彼女らが如何にして「日本」という〈ナショナルな空間管理〉の下で生活を組み立てているのか、という問いを巡って研究しています。

稲津秀樹 
関西学院大学大学院社会学研究室研究員/日本学術振興会

●稲津さん発題
『「管理」する国家と「共生」の逆説~重層的な境界問題を誰とどのように超えるのか?~』と題して発題。国家の監視システムが外国人管理に留まるものでなく、私たちの日常を超えたところで構築される監視システムだと警鐘。重層的な境界問題を生きる当事者として、日本の工場で働く日系ペルー人らの語りから監視のリアリティある経験を紹介。そして「新入管法体制」を誰とどのように乗り越えるのか?と提起した。また、「他者への排除へ向かう社会は誰もが他者となり得る社会だ」とも警鐘を鳴らした。


③玉田エミリア美恵さんは日系ブラジル人で祖父が奈良県十津川村出身。両親も奈良県出身。奈良県シルクロード博記念国際交流財団(NIFS)の相談員として、主に在日ブラジル人の方々の教育、生活、入管等の様々な問題に取り組む。相談の傍ら、大和郡山市でブラジル人の子ども達を対象に母国語(ポルトガル語)や母文化を学ぶ集まりを開催。以前は県内の多くの学校に通訳や日本語指導で呼ばれていたのが、現在は1件もないとのこと。ブラジル人の多くがリーマンショックで帰国したためだという。

玉田エミリア美恵 
なら・シルクロード博記念国際交流財団ポルトガル語相談員

 
参考
(注1)J.A.T.D.にしゃんたさん Official Homepage ウィキペディア
(注2)露の新治さん ホームページ ウィキペディア

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