部落解放研究第42回全国集会 |
世界人権宣言60周年和・反差別・人権を確立する実を機に、 平践をさらにおしすすめよう! |
部落解放研究第42回全国集会が10月3日から5日まで宮崎で開催され、41都府県から4800人が参加しました。 ■ 差別との闘いは命を守る
特に印象深かったのは、仮谷氏ご自身や周りの人々の実体験をめぐる差別問題のお話です。子ども時代は家の職業や居住地域を指して友達から心ない言葉を投げられたことや、学生になって村を出てからは自分の生い立ちを話せばそこにいられなくなると思って隠しつづけたこと、友達の結婚差別、自分自身の就職差別などを経験されたお話でした。解雇闘争を機に勉強を始めたことで、「自分のくらしを卑下して自ら差別していた自分に出会った」そうです。お話の最後は自身の出生に際して両親も差別と闘い、そのおかげで自分が生まれたことを明かし、「差別は命を奪う。差別との闘いは命を守る」と結ばれました。子や孫の代をこえても続く差別の根深さに恐怖心や許せない気持ちがわき、また、実体験を教材にして教えてくださった仮谷氏の堂々とした姿勢に感動しました。 |
■ 「日本の社会保障と福祉のあり方」 |
2日目は、9分科会の選択テーマに分かれ、私たちは第8分科会「日本の社会保障と福祉のあり方」に参加しました。大北規句雄氏(部落解放同盟)より「日本の社会保障を考える」として問題提起がありました。現状の社会保障制度(保険・生活保護・年金制度・介護保険・後期高齢者医療制度等)が貧者をおいつめている現状に触れ、日本型社会保障についての学習と進むべき方向について話された後、活発な質疑・応答が交わされました。次に、松端克文(桃山学院大学)より「これからの社会福祉」と題して、厚生労働省による「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」報告書『地域における「新たな支え合い」を求めて―住民と行政の協働による新しい福祉―』(2008年3月)の解説と批判的考察がなされました。地域活性化に成功した自治体のユニークな実践も紹介されました。午後の部では、「滋賀県湖南市・甲賀市の総合実態調査から考える母子世帯の自立支援、就労の課題」というテーマで西田芳正氏(大阪府立大学人間社会学部)からのお話がありました。母子世帯の厳しい生活状況について説明され、社会は男性中心の労働で女性の労働が都合良く利用されており、これは男性中心の労働組合の責任でもあると指摘されていました。また、調査の結果、母子世帯向けの給付のあり方に改善を求める当事者の声なども紹介されました。続いて、山野正弘(大阪府泉佐野市)より「和泉市の地域就労支援事業から考える自立支援、就労の課題」についてお話があり、先進的な取り組みが紹介されました。就労支援の理念として、「就労阻害要因の除去・解消・解決に向けて総合的に取り組む」こととされ、住民にもっとも身近な総合行政としての市町村が果たす役割を明確にされていました。自立支援事業に対しては、就業体験や職業訓練を実施し、また、雇用期間終了後は「無料職業紹介センター」と連携し、雇用時に取得した職業経験やノウハウ、就労意欲を活かし、民間事業所に就職のあっせんを行うという考えを聞きました。泉佐野市の地域就労支援事業が住民から大変喜ばれ、成果があがっていることに参加者は皆共感しているようでした。「しかし、かなりのコストが必要ではないか」との質問に対しては、「この事業の成果は数字だけで換算できない。就労支援によって一人でも救われたら、これに勝る価値があるだろうか。生活保護受給に至る予防にもなる」と答えられたことが印象的でした。他にも「保護と自立の間に橋を架けることはできないものか」「不正受給のキャンペーンにどう応えていくか」など活発な議論がなされました。 |
実施された分科会 第1分科会 入門・時事 第2分科会 入門 部落の歴史 第3分科会 狭山再審闘争と司法民主化の課題 第4分科会 部落差別の実態と糾弾闘争の課題 第5分科会 人権侵害被害は救済されているか-人権侵害救済の法制度早期確立へ- 第6分科会 『市民と行政の協働』の視点から同和行政を考える 第7分科会 拡がる学力格差を克服し、豊かな学力を育てる学校づくり「力ある学校」づくりを 第8分科会 日本の社会保障と福祉のあり方 第9分科会 意識調査結果から見る啓発の課題と参加型人権研修 |